私たちは、普段使っている物が目に見えて壊れたり、明確な不具合が起きてから初めて、買い替えを検討することがほとんどではないでしょうか。しかし、それでは手遅れになる場合もあります。特にサーフィンの世界では、この考え方が命取りになることがあります。サーフボードと自分を繋ぐリーシュコードは、切れてからでは遅いのです。リーシュコードが切れると、ボードは波にさらわれ、危険な状況に陥る可能性があります。そのため、リーシュコードは目に見えて壊れていなくても、定期的に交換することが鉄則とされています。
しかし、リーシュコードのメンテナンスにばかり意識が向きすぎると、別の落とし穴にはまることがあります。多くのサーファーが軽視しがちなのが、リーシュコードとサーフボードを結ぶためのリーシュロック(リーシュストリング)の存在です。この細い紐は、リーシュコード以上に負荷がかかることが多く、劣化しやすい部品です。リーシュコードは完璧にメンテナンスされていても、リーシュロックが切れてしまえば、ボードは離れていってしまいます。つまり、サーフィンにおけるトラブルは、リーシュコード自体のメンテナンス不足だけでなく、「リーシュロック」という見落としがちな部分に原因があるケースも少なくないのです。
この教訓は、ビジネスにも通じる本質的な洞察を与えてくれます。たとえば、設備の老朽化や安全管理の不備が原因で発生する火災や事故は、メンテナンスを怠った結果、甚大な被害につながる典型的な例です。また、問題の本質を見誤る「視野の狭さ」も同様に危険です。何かトラブルが発生した際、私たちはその事象ばかりに目を奪われがちです。洗濯機が動かなくなったとき、洗濯機本体の故障だと決めつけて修理を試みたり、新品を買ってみたものの、実は単にブレーカーが落ちていただけ、というようなケースです。この場合、洗濯機という「リーシュコード」にばかり注目し、ブレーカーという「リーシュロック」の確認を怠ったために、無駄な時間と労力を費やしてしまいます。
本当に大切なのは、「壊れたら買い替える」という発想から抜け出すことです。問題が起こってから対処するのではなく、問題が起こらないように日頃から点検し、予防的な対策を講じること。そして、特定の箇所にばかり目を奪われることなく、全体を俯瞰することです。何かと何かをつなぎ合わせる「継ぎ目」や責任分界点の「グレーゾーン」は見落としがちになることが多いです。さらに、万が一の事態に備えてバックアップ体制を整えることも重要です。サーフィンも、ビジネスも、そして私たちの生活も、見落としがちな「リーシュロック」にまで配慮する姿勢こそが、安全を保つための鍵となるのです。