「待つ」ことは能動的です。料理の熟成、園芸における開花、恋愛における心の整理。これらは本当に時間の経過を「待つ」だけでしょうか?私たちは往々にして「待つ」ことに、効率の悪さや退屈さを感じがちです。「待つ」ことは、受動的で苛立ちさえ伴うイメージがつきまといます。しかし、ワインは寝かせることで味の深みが増します。サクラは冬を越えて春の訪れを告げます。信頼関係は時間を掛けることで絆となります。私たちのビジネスや人生においても「待つ」ことでしか得られない本質的な価値が存在します。
例えば、サーフィンは、その性質上、様々な場面や時間軸で「待つ」ことを強いられるスポーツです。大波に挑むために波の発生を数年「待つ」こともあれば、リフレッシュを目的とし、次の仕事の休日まで「待つ」こともあります。サーフトリップの移動に伴う「待つ」時間もあれば、実際に海上で波を「待つ」(波待ち)こともあります。波に乗る優先順位を「待つ」ことも、波に乗って次のアクションのために動作を「待つ」こともあります。私は当初、これらの時間をただの待機時間だと捉えていました。しかし、サーフィンに適した波がなかなか発生せず、待ち焦がれたり、休日に限って波がなかったりと、不確実な自然を相手にする中で、「待つ」ことの奥深さに気づかされました。
私はサーフィンによって、「待つ」ことは4つの能動的要素で成り立っていると考えました。
1. 「準備」の能動性
来るべき行動に備えるための、緻密な調整と戦略立案の期間です。
それはただ時間を過ごすのではなく、道具の手入れ、気象情報の収集、ベストな波を捉えるためのイメージトレーニングなど、具体的な行動を伴う時間です。
2. 「受容、享受」の能動性
不確実性を受け入れる、「享受力・受容力」を養う期間です。
波は人間の都合や欲求ではどうにもならないことを知り、その自然の中に身を置くことで自然の摂理を受容する他なりません。
3. 「自己対話」の能動性
波を「待つ」時間は、意識の水面下や自己の内面で深く能動的な精査と統合が起こっています。
それは、過去の経験を振り返り、今後の計画を立て、現在の課題解決について思考を巡らせる、能動的な内省のプロセスに他なりません。
4. 「心の浄化」の能動性
穏やかな海で波を『待つ』行為は、肉体的な休息にとどまらず、精神的なデトックスと再生を促します。
慌ただしい日常や仕事のプレッシャーから能動的に離れることで、心がリフレッシュされ、新たな視点や創造性につながることがあります。
サーフィンが上手くなりたいと必死になると、無駄な動きが増えることがあります。自分の体を動かす前に余計なことをせず、あえてじっと待つことで、今までにない身体的感覚を得たことがありました。それはまさに、「待つ」ことで手応えを感じた瞬間でした。この経験は、「待つ」という行為が、単なる受動的な待機ではないことを示していると思います。
これはビジネスや日常における局面においても同様だと思います。「能動的にじっと待つ」こと、そして、できることを最大限に実行することが最も「待つ」ことなのです。現代社会においては、効率や即時結果が求められますが、「待つ」ことの有意義性の見直しが必要だと思います。「待たされる」と受動的ですが、「待つ」は能動的です。