私たちは「波は沖から岸に向かってくるもの」という、揺るぎない常識を心のどこかに持っています。サーフィンにおいて、この常識は波に乗るための基本的な前提です。しかし、自然はそのような人間の作り上げた固定観念を、あっさりと覆すことがあります。その象徴的な現象の一つが、バックウォッシュです。
バックウォッシュとは、波が岸に打ち寄せた後、海水が勢いよく沖に向かって戻っていく逆流のことです。大きな波が押し寄せた後や、海岸の傾斜が急な場所で、その流れは特に強くなります。サーフィンを知らない人や初心者の方は、この不意をつく背中側から来る波に驚かされることでしょう。
通常、サーフィンは、沖から来る波に乗って岸へと向かいます。しかし、このバックウォッシュという「沖へ向かう逆流」は、波待ちをするサーファーの背後から迫ります。予期せぬ方向からの波の押し寄せに、体勢を崩しバランスを崩すこともあるでしょう。これまでの常識が揺らぐ瞬間です。
バックウォッシュからのメッセージは、「当たり前を疑うこと」です。自然の力の前では、人間が作り上げた「常識」はいとも簡単に覆されます。波はただ寄せては返す、その単純な繰り返しの中に、私たちが気づくべきことがあると思います。この教訓はサーフィンに限ったことではありません。仕事で行き詰まった時や、新しいアイデアを生み出す時にも通じます。固定観念を捨てて、物事の「逆の流れ」に目を向けることで、突破口が見つかるかもしれません。