誰もが知る名作映画「ジョーズ」。平和なビーチを恐怖に陥れる巨大な人喰いザメの物語です。しかし、この映画から名付けられた、もう一つの「ジョーズ」が存在することをご存知でしょうか。それは、ハワイのマウイ島に現れる伝説的な大波、その名もジョーズ(Jaws)です。
ハワイ語でペアヒと呼ばれるこの波は、あまりの恐ろしさと圧倒的な存在感から、いつしか映画と同じ「ジョーズ」という名で知られるようになりました。マウイ島北岸のポイント「ペアヒ」には、冬になると発達した低気圧が巨大なうねりをもたらします。その高さは20メートル近くにも達し、まるで山が迫ってくるかのような光景が広がります。
映画のジョーズが私たちに恐怖を植え付けたように、この自然のジョーズもまた、畏怖の念を抱かせる存在です。そのあまりの巨大さゆえ、通常のサーフィンでは到底太刀打ちできません。そのため、ジェットスキーでサーファーを波に乗せる「トーイン・サーフィン」という特殊な方法が考案されました。これを乗りこなせるのは、世界でもごく限られたトッププロサーファーのみ。彼らは、自然の圧倒的な力に飲み込まれる危険を冒しながらも、自分の限界を超えようとします。
世界には、ジョーズに劣らず規格外の波が存在します。アイルランドのマラモラ、メキシコのプエルト・エスコンディード、そしてポルトガルのナザレ。特にナザレのプライア・ド・ノルテでは、30メートル級の波が出現することもあります。日本人プロウィンドサーファーの中里尚雄さんのように、これらの大波に命を懸けて挑む人々が、世界にはいるのです。
この大波は、私たちが普段暮らす世界のスケールがいかに小さなものかを知るきっかけになります。私たちが「すごい」と感じる基準や「限界」だと感じるものが、世界のどこかには想像をはるかに超えるレベルで存在しているのです。もちろん、誰もがジョーズに挑む必要はありません。それでも、世界には想像を絶する困難に立ち向かう人々がいることを、心に留めておいてほしいのです。
自分の常識を超えた型破りなスケールを知ることが、あなたの世界を広げる第一歩になるはずです。