サーフィンにおいて「海の中のどこで波を待つか」は、ライディングの方向性を大きく左右します。一見すると、サーファーは海の上でただプカプカと浮かんでいるだけのように見えるかもしれません。しかし実際は、波待ちは非常に能動的な行為です。潮の流れ、風向き、周囲のサーファーの動きによって、海の状況は絶えず変化します。流されれば、あっという間に良い波のブレイクポイントから外れてしまいます。そのため、理想的な位置をキープするには、常に海の動きを読み取りながら良い位置をキープし続ける必要があります。
波を掴むためには、波の「トップ」、つまり波のピークが訪れる場所でテイクオフすることが重要です。波のボトム付近から立ち上がってしまうと、波のエネルギーを使い切れず、立った瞬間、乗りしろがなく、次のアクションにつながりません。どんなに素早くサーフボードの上に立ったとしても、待つ場所が悪ければ、良いライディングにはつながりません。サーフィンは位置選びのスポーツとも表現できるかもしれません。
私自身も長くこの「位置取り」の重要性を理解していませんでした。いつも同じ場所で波を待ち、流れに身を任せていました。その結果、波の力に頼りすぎて、波のブレイクのかなり手前でテイクオフしてしまい、気づけば波のボトムに降りきっていたのです。そこに波のフェイスはすでになく、アクションにつながる余地もありませんでした。
しかし、ある日ほんの少しだけアウト(沖側)にポジションを変えてみたところ、波の見え方が一変しました。はじめは不慣れな作業で波に置いて行かれ、失敗の連続でした。しかし、アウトから漕ぎ出すことによって、ほんの少しずつ余裕が生まれ、視界が広がり、新たなライディング体験が得られたのです。自分の位置を少し変えるだけで、景色が変わるということを体感しました。
この気づきは、ビジネスにも通ずると思います。市場の中で自分の「位置」をどう定めるか。これが成果を左右する最大の要素だと思います。市場の流れ、顧客の動き、競合の配置を把握しながら、自分のポジションを適切に調整していく必要があります。流れにまかせて、同じ場所でただチャンスを待っていても、良い波はいつまでも来ません。能動的に動いて位置を変えれば、失敗も伴いますが、新たな波を掴む可能性もあります。
どんなに優れた能力があっても、置かれているポジションが悪ければ成果は出にくいものです。「どこで戦うか」「どこで待つか」を意識することは、戦略そのものです。サーフィンにおける波待ちは、環境を読み、タイミングを見極め、そして運を掴むという一連のプロセスの訓練です。これはまさに、変化の激しいビジネスの海を生き抜くための本質的な力でもあります。
波は、ただ待つものではありません。正しい位置に身を置き、自ら行動した者だけが、成果を掴み取れると思います。