Innner Current サーフィン

同音異義プリズム

悩んでいるときほど、物事はひとつの見方しかできなくなります。

進むか、諦めるか。
やるか、やめるか。
成功か、失敗か。

まるで答えがひとつしかないように感じてしまいます。

私たちは無意識のうちに、ひとつの言葉にひとつの意味を固定してしまいがちです。しかし本当にそうでしょうか。

日本語には、同じ音でありながら異なる意味を持つ言葉があります。

たとえば、「さめる」。

それは「冷める」かもしれませんし、「覚める」かもしれません。

「冷める」は情熱を失うこと。
「覚める」は情熱を思い出すこと。

同じ響きでも、熱量はまったく異なります。

このように、読み方は同じでも意味が異なる言葉を「同音異義語」といいます。

そして、言葉の捉え方を変えると、私たちの見ている景色も変わるかもしれません。

たとえば、「とる」という言葉です。「とる」と聞いてどんな漢字を思い浮かべますか?

ここでは、青を「とる」3人を紹介したいと思います。

1人目は、青を「捕る」プロサーファーの Jordy Smith(ジョーディースミス です。南アフリカ出身で、力強くダイナミックなサーフィンスタイルで知られています。特に印象的なのが、どんな波もキャッチするテイクオフの技術です。波の動きを読み、タイミングを見極め、最良の瞬間を捉える。広大な青の中から、一瞬しか現れない波を「捕る」のです。

2人目は、青を「撮る」水中写真家の David Doubilet (デイビット・ドゥビレ)です。「人々が海に恋をし、海を守るような写真を撮る」という信念のもと、生涯を海に捧げてきました。子どもの頃、手作りの防水バックにカメラを入れて、水中撮影をはじめました。海を「撮る」ことで、海の神秘さを世に広めるパイオニアとなりました。

3人目は、青を「採る」植物学者の Anna Atkins (アンナ・アトキンス)です。イギリス出身の彼女は植物を採集し、その形態を記録することに情熱を注ぎました。シアノタイプと呼ばれる青写真の技法を用い、植物を科学的記録と芸術表現を融合させています。植物を「採る」ことで、植物の美しさを青の中に残したのです。

同じ「とる」でも、

波を捕る。
海を撮る。
植物を採る。

これだけでも獲得、表現、記録の意味合いを持ちます。音は同じでも、解釈はひとつではありません。

そして、人の悩みもまた同じなのかもしれません。元陸上選手の 為末大さんは、「諦める」という言葉を再定義しています。一般的に諦めるとは、「見込みを失い断念する」ことを意味します。しかし為末さんは、「諦める」は「明らめる」とも言います。現実を明らかに見つめ、自分にできることとできないことを見極めること。それは逃げることではなく、現状を正しく理解する行為です。同じ「諦める」でも、見方を変えれば意味は変わります。

言葉に複数の意味があるように、人生の壁にも複数の意味があります。答えがないのではなく、まだ別の解釈に出会っていないだけ。悩みの中で見失いそうになったときは、ユーモアのある言葉遊びをしてみる。多角的に捉えると、今までの悩みに新たな色彩が宿るかもしれません。

 

 

 

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