Innner Current サーフィン

圧着不良

 

 

スランプの克服法はよく問われます。
しかし私は、スランプを乗り越える方法はない、と思っています。

なぜなら、スランプとは「乗り越えるものではなく、上手く付き合っていくもの」だと考えているからです。

私にとってスランプとは、「ゴールが見えず、何をすればいいのかもわからなくなっている状態」です。

だから、渦中にいるときは「今、スランプ中だからこうやって対処しよう」と冷静にはなれないはずです。焦りや不安が胸を締めつけ、目の前のことしか見えなくなります。

しかし、後から振り返ると、あのときのスランプが自分の注意深さを一段と掘り下げてくれたように思います。

思い通りにいかないから考える。
わからないから試す。
試して失敗する。
修正を試みる。
また失敗する。

その繰り返しの中で、自分の弱点や思い込みが少しずつ見えてきます。

苦しい時間ではありますが、スランプは自分を鍛えるためのトレーニング器具のようなものかもしれません。

ただ、このスランプと向き合う上で、一つだけ守っていることがあります。それは「原因を他人や環境のせいにしない」ことです。

外部要因の影響はもちろんあります。しかし、そのすべてを外部のせいにした瞬間、自分の可能性まで手放すことになります。これはもったいない。

「なぜうまくいかないのか」を自問自答することがスランプと付き合う入口だと思っています。

また、私は「うまくいっているときほど、危ない」と感じています。

・緊張感がほぼゼロのとき。
・考えなくとも体が勝手に動いていてしまっているとき。
・経験と感覚で出来てしまうとき。
・順調なとき。
・自分は出来ていると思っているとき。
・(本当はダメなことを)正しいと思っているとき。

このような状態でスランプの種はひっそりと蒔かれています。

スランプの種は、自分の中の「当たり前」の中に溶け込んでいて、この時点では、なかなか気づけないものです。

そして、忙しさや予期せぬ出来事をきっかけに、その種から芽が出て、ミスとして表面化します。

こうなるとスランプの原因がわかるまで、アセアセ・モヤモヤした状態が続きます。

こうしたスランプの最中に、私が意外と効果を感じたのが「何もしないこと」でした。

無理にスランプから抜け出そうとするのではなく、この流れにあえて乗ってしまうのです。

そうすると徐々に焦りが薄れて、見えなかったものが見えてくることがあります。

この経験から「身をまかせることは、逃げることではない」と学びました。

もう一つ、私にとって転機になったのが、「大金を使う」ことでした。

これは自暴自棄の衝動的散財ではありません。

本気で考え、自分で選び、覚悟を持ってお金を使います。

高価な道具でも、学習環境でも、経験でも構いません。大切なのは、自分で責任を持って選択することです。

そうすると「道具や環境が悪い」という言い訳が通用しなくなります。そこに残るのは、「自分の選択と技量」だけです。

お金はスランプそのものを「解決」するわけではありませんが、別の角度から捉え直すこともあります。背伸びした投資は視座を変えるきっかけにもなりました。

この経験によって、自分のミスを「注意不足」という曖昧な言葉で片付けなくなりました。

ミスの原因がわかるまでは、自分に対しての不信感も募るものですが、原因がわかれば自分に対しての信頼へと転じます。

確認を怠っていたのではない。確認項目そのものが足りていなかった。

そう気づいたことで、「もっと真面目にやる」という精神論ではなく、「確認項目を一つ増やす」という具体的な改善策を打つことができました。

自分のミスを理解できたことで、もし今後、他人がミスしたときにその理由も理解したいと思うようになりました。

スランプとの付き合い方をまとめると、

1.自分のミスを素直に認める

2.焦りをできるだけ取り除く

3.原因を探り、仮説を立て、上手くいかない事象を再現させる
→これに行き詰まったら「何もしない」or「大金を使う」

4.スランプに巡り会えたことに感謝する

スランプは、サーフィンによく似ています。

目の前に現れる波は、一つとして同じものがありません。

ある人にとっては最高の波が、別の人にとっては危険な波となることもあります。

波を無理に生み出すことも、消すこともできません。

追いかけるほど遠ざかることさえあります。

けれど、波の性質を理解し、付き合い方を学ぶことはできます。

乗ることもできる。
くぐり抜けるときもある。
ただ、浮かびながら待つだけのときもある。

スランプも同じように、無理に乗り越えず、うまく付き合っていく。

そのプロセスで、自分でも知らなかった自分に出会えるのだと思います。

 

 

 

 

本記事は、日本経済新聞×noteのコラボ企画「#スランプの乗り越え方」への応募作品として執筆したものです。

 

 

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