TASCHEN刊行の『Anna Atkins. Cyanotypes』が私に省察を促します。ページをめくるたび、そこに写し取られた植物は鮮やかな存在感を放ちます。そこには不思議なほど「海」の気配がありました。しかし同時に、なぜ私はこの作品から「海」を感じるのだろう、と考えています。
青色が人に与える影響
まず前提として、青色には心理的・生理的に多くの作用があることが知られています。
- 集中力の持続 認知的な負荷を下げながら、注意力を長く保つ効果があるとされています。
- 創造性の促進 自由さや開放感と結びつきやすく、アイデアを広げる発散的思考を促す傾向があります。
- 身体の鎮静 副交感神経が働き、心拍数が落ち着く方向に向かうという報告があります。
- 体感温度の低下 同じ室温でも、青みがかった環境では「涼しい」と感じやすくなります。
- 信頼感の醸成 信頼・誠実・安定の象徴として機能しやすく、企業ロゴやビジネスの場で多用される理由のひとつです。
- 空間の開放感 後退色としての効果で、空間を広く見せる心理的作用があります。
- 攻撃性の抑制 青い照明を導入した空間で攻撃的な行動が減少したという研究事例もあります。
つまり青色とは、私たちの感情・身体・行動に静かに、しかし確実に働きかける色なのです。
アトキンスの作品と、「海」の正体
アンナ・アトキンス(Anna Atkins, 1799–1871)は、19世紀イギリスの植物学者であり、世界で最初の女性写真家とされている人物です。アンナはサイアノタイプという技法を用いています。サイアノタイプとは、薬品処理をした紙の上に植物を直接置き、太陽光で感光させてから洗い流すという技法です。白く抜けた植物のシルエットと、プルシアンブルーの深い青が現れます。藻類を中心とした植物記録として、科学的な正確さと視覚的な美しさを両立させています。
冒頭に戻ると、私はこの作品から強い「海」の印象を受けました。しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。掲載されている植物は藻類ばかりではなく、シダ類など陸上に生息するものも含まれています。それでも私は「海」を感じてしまいます。
私は、アンナは海を表象しようとしていたわけではないと思います。植物を正確に記録するという目的のもと、サイアノタイプという技法があり、平面的で光を透過・遮断する構造を持つ植物を被写体にした結果、有機的に揺らぐ植物のかたちと、プルシアンブルーの深い色調が重なり、「海」を想起させる視覚的効果が生まれていると考えます。それは意図せず生まれた印象であり、青色が持つ心理的な作用でもあると思います。
自分の仕事と、海への接続
いつの間にか、この考察を自分ごとに置きかえていました。私はサーフィンが好きです。しかし現実には、それを直接仕事にすることの難しさも実感しています。現在の仕事自体はサーフィンとは無関係です。
それでも、サーフィンを通して得てきたものは確かに仕事の中に活きています。不確実性が高い環境での判断、波に乗るために何度もトライする習慣、コントロールできない自然との向き合い方。それらは、仕事で課題に直面したとき、大いに役立っています。現在、私の仕事は直接「海」に結びついてはいませんが、試行錯誤を積み重ねながらいつか自分の仕事にも海の気配が滲み出ればと思います。
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