Phase 2:実践【楽しむ】
Chapter 5:ドルフィンスルー
14.受け流す技術
沖に向かってパドリングをしていると、次々と波が押し寄せてきます。その波を正面から受け止めていては、いつまでも沖に出られません。
そこで使うのがドルフィンスルーです。ボードごと波の下に潜り込み、力をいなして通り抜ける。波と戦わず、やり過ごす。力で押し返そうとすると、むしろ弾き飛ばされます。受け流すことで、前に進めます。
文章を書く準備をしていると、同じことが起きます。テーマに関連する情報を調べているうちに、面白い話が次々と出てくる。あれも入れたい、これも伝えたい。その衝動を全て受け止めようとすると、文章は沈みます。
ドルフィンスルーとは、文章においては「書かない判断」のことです。情報や素材が押し寄せてきたとき、全てを盛り込もうとせず、今回は使わないと判断して通り抜ける。その判断ができると、文章は前に進みます。
15.思い切って捨ててみる
書いた文章を削るのは、勇気がいります。時間をかけて調べた情報、苦労して書いた一文ほど、手放しにくい。その衝動は波のように押し寄せてきます。
しかし、飲まれてはいけません。
ドルフィンスルーの技術を用いります。波が来たとき、正面から受け止めるのではなく、いったん潜って通り抜ける。削るという行為も同じです。書きたいという「波」が押し寄せてきたとき、いったん立ち止まって潜る。「この一文は、テーマに直接繋がっているか?」と問う。繋がっていなければ、通り抜ける。
たとえば、こんな文章があったとします。テーマは「サーフィンを始めたきっかけ」です。
「サーフィンを始めたのは30歳の頃だった。気分をリフレッシュしたいと思い、茅ヶ崎海岸に行き、サーフボードに跨った瞬間、何かが弾けた。ちなみに、そのときに使ったサーフボードは中古のロングボードで、長さは9フィート2インチくらい、フィンは取り外しできないタイプ(オンフィン)だった。初めて波に押された感覚は今でも忘れられない。」
読めます。でも、サーフボードのスペックはこのテーマに必要でしょうか。「始めたきっかけ」を伝えたいなら、答えはノーです。潜る。通り抜ける。
「サーフィンを始めたのは30歳の頃だった。気分をリフレッシュしたいと思い、茅ヶ崎海岸に行き、サーフボードに跨った瞬間、何かが弾けた。初めて波に押された感覚は今でも忘れられない。」
浮上したとき、文章は一段軽くなっていました。
削った情報は消えるわけではありません。サーフボードの話は、別のテーマで使えばいい。今回使わないだけです。捨てることは弱さではありません。何を残すかを判断できる力の表れです。そしてその判断こそが、ドルフィンスルーです。