皮を剥ぐから「カワハギ」。宿を借りるから「ヤドカリ」。木を突くから「キツツキ」。命名は特徴や見た目に由来することがほとんどでしょう。しかし、そのネーミングに惑わされてはいないでしょうか。
「ハリセンボン」は、針が千本あるように見えることからそう呼ばれていますが、実際に数えてみると350本程度らしいです。これは、誤差の範囲ではありません。
同じように誤解されやすい「ナマケモノ」。ナマケモノの睡眠時間は1日に20時間以上、移動スピードは100m/h、体にコケが生えるほどのスローペースです。しかし、生存戦略という観点では、別の側面が見えてきます。
このスローペースが肉食動物から身を守ります。また、哺乳類としては珍しく、外気温の影響を受けやすい体質です。体温変化をある程度受け入れることで、基礎代謝によるエネルギー消耗を徹底的に抑えています。エネルギー消費量の少なさゆえ、エサはわずかな量で済みます。そのうえ、毒のある木を食べたりするので他の動物と競う必要がありません。
つまりナマケモノは、「怠けている動物」ではありません。むしろ、“無駄なエネルギーを使わずに生き抜く”という点で、極めて合理的な動物なのです。そしてこの「ゆっくりであることの合理性」は、いま人間社会にも広がり始めています。
デンマークの首都 コペンハーゲン は、「世界一の自転車都市」を目指し、自転車インフラを徹底的に整備しました。その結果、通勤・通学における自転車利用率は世界的に高い基準にあります。渋滞は減り、CO2排出量は抑えられ、市民の健康指標も改善されました。「より速く移動する都市」ではなく、「無駄なく移動できる都市」が、結果的に暮らしの質を高めたのです。
この感覚は、私自身のサーフィン体験にも通じています。自分のライディング映像をスローモーションで見返したとき、頭の中のイメージと実際の動きが大きくズレていることに気づきました。自分では、波のトップを見続けながら滑っているつもりでした。しかし映像の中の私は、視線が定まらず、力任せに身体をひねっていました。
スピードを求める意識が強すぎるあまり、気持ちが先走っていたのだと思います。一方で、陸上トレーニングでは、あえてゆっくり動作を繰り返したときのほうが、身体に動作が定着します。ゆっくり動くことで、気づくことがあります。スローとは、単に速度を落とすことではなく、自分の解像度を高める技術なのかもしれません。
「スロー」は、コペンハーゲンのような都市や、特別な趣味の中だけにあるものではありません。それはもっと私たちの日常にある、ささやかな行為の中にも潜んでいるはずです。例えば、近所への買い物や移動を車から徒歩に変えるだけでも、普段見落としているものに気づけるかもしれません。
そして、自宅で手軽にこの「スロー」を体験できる方法があります。塗り絵です。色鉛筆を片手に、ゆっくりと色を重ねていく。速く塗ろうとすると雑になりやすく、丁寧に塗ろうとすれば自然とペースが落ちます。手の動きが思考の速度に影響し、気づけば余計なことを考えない時間が流れはじめます。
実はこの記事のテーマも2020年くらいアイデアとしてはあったのですが、今にしてようやく文章として形になりました。まぁこれも「ナマケモノ戦略」ってことで受けとめていただければ幸いです。
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