Phase 1:準備【決める】
Chapter 2:方針を立てる
5.狙う波を見定める力
サーフィンをはじめると、海で発生している波、そのどれもが魅力的に映るかもしれません。しかし、熟練したサーファーは、その全てを追いかけるようなことはしません。彼らは、自身のスキルレベル、その日の海のコンディション、そして「自分が波を掴んだ後にどう乗りこなすか」という明確な意図に基づき、「一本の波」を見定めます。あれもこれもと手を出すと中途半端な結果になります。最大限の結果を生むのは、この「狙いを定める力」です。
文章においても、この「見定める力」は極めて重要な要素です。あらゆる文章術の本に記載がある通り、「何を書くか」を一つに絞ることをおすすめします。なぜなら、テーマが増えるほど、読者(また書き手である自分自身も)が混乱し、整理しにくくなるからです。一つのテーマに集中し、それを完結させることで、後から見返した際にも内容を理解しやすくなります。理想は、その文章を「一言で言うと〇〇」と要約できる状態です。
ここで目指すべきは、いわゆる「上手い」文章よりも、「わかる」文章です。ある事柄に対して「少なくとも私はこう思う」という主観的な視点を、論理的にわかりやすく伝える。他者が読んでも「この人はこのことについてこう思うのか」と伝わることを最終目標とします。
6.「一連の流れ」を意識する
サーフィンは、一連の動作の中で何か一つでも誤ると、上手く波に乗れません。ポイントとなるのは「余計なことをしない」こと。力まず、無駄な力を抜き、自然体でいることです。
また、波に乗ってからではなく、乗る前の動作やポジション取りこそが最重要です。各ポイントを「点」とすれば、それを繋げることで一つの「線」=華麗なマニューバーが生まれます。
これは文章で言うところ、一つのテーマで「構成を決めること」です。
様々な構成があると思いますが、私は主に3つの型の中から選んでいます。
- 起承転結型
- 重点先行型
- 序本論型
サーフィンで波の流れを読んで動きをデザインするように、文章もまた思考の流れをデザインする行為です。
7.目的を定める──文章の軸がブレる人の共通点
サーフィンが上手い人は、波のトップからボトムまでの位置移動が巧みです。「自分が今どこにいて、どこへ向かい、どう乗るか」──この一連の動きを支えるキーワードが「目線」です。目線がブレない人は、サーフィンが上手いと言われます。
サーフィンにおける「目線」は、文章における「文脈」。伝わる文章に共通するのは、書き手の意図が一貫してブレないことです。逆に言えば、文章の軸がブレる原因は、目的の不在と論理の欠如にあります。
論理とは、読者が「なぜ?」と思う前に、その答えが自然に置かれている状態のことです。目的を定め、文脈を揃える。それが、ブレない文章となるのです。
8.文章と読了後を「想像」する──書く前が勝負
サーフィンだけでなく、旅行も、料理も、仕事でもいきなり本番に臨むことありません。そこには必ず、事前の準備と「想像」のプロセスが存在します。文章もまた、いきなり書き始めるのではなく、「書くことで期待する結果」を先に想像することから始めるべきです。
その第一歩は、伝えたいテーマを紙に書き出すことです。頭の中にある考えを列挙し、分類し、まとめていく。その過程で、「最も伝えたいこと」を一つに絞っていきます。文字数を決めることも有効です。目的の輪郭が定まると、何を書き、何を削るかの判断が明確になります。
そしてもう一つ、意識してほしいのが「読了後の状態」を想像することです。読者がこの文章を読み終えた後、どんな感情を抱き、どんな行動を起こすのか。その姿をイメージすることで、文章が研ぎ澄まされていきます。
- 私にとってのテーマ「思考を可視化し、自分の言葉で伝わる文章を書く」
- 読了後に期待する結果「書くことで自分の思考を可視化できる。その言葉は、やがて他者にも届く」
その想いを起点に、毎回の言葉を選んでいます。
伝わる文章は、書く前の想像で8割以上決まる。「想像」のプロセスをどれだけ深く、具体的に行えるか。少なくとも私はそう思います。
9.ロールモデルは1人(1冊)まで
私のサーフィンにおける最大の失敗は、「我流で続けてきた」ことです。YouTubeやハウツー本から情報を集め、自分なりにアレンジを加えた結果、かえって変な癖がついてしまいました。癖を修正するには膨大な時間がかかります。前提知識がない段階からのはじめの1歩目が、その後の成長曲線を大きく左右します。
これはサーフボード選びに通ずる部分があります。いきなりプロ用のボードではなく、自分のスキルに合った1本を選ぶように、文章においてもロールモデルは「1人(1冊)」に絞ることが大切です。
選ぶ基準は、奇をてらったものではなく「王道」です。ざっと目を通したものの中で、最も多くの共通点を持つ、いわば最大公約数的なものを選ぶ。まずはそこから徹底的に学び、エッセンスを自分のものとして消化することが大切だと思います。